自宅の浴室にある鏡で、問題なく自分の姿を見ることはできていますか?
鏡が乾燥している状態でもウロコ(水あか)が見える場合、鏡を濡らすと水分が鏡に付着して流れず、まともに鏡の役割を果たしていないことでしょう。
世の中にはこのウロコを解消する方法が色々と紹介されていて、中にはビジネスとして大層な機器で取り除いてくれる業者もあります。これはこれでプロがプロ仕様の道具を使うので、お金さえ払えばあっという間に新品同様の鏡に戻してくれます。
ただ、積年の水あかだろうと、たかだか鏡のウロコ取りに業者に依頼するのは費用対効果が悪いと言わざるをえません。自分でも簡単にできることは自分でやりましょう。
業者への依頼以外、これまで鏡のウロコ取りを色々な方法で試してきた結果、やはり一周回って「ダイヤモンドパッドが一番」というのが私の結論です。
今回は、これまで試した他の方法と合わせて、ダイヤモンドパッドの使い方のコツや頑固なウロコへの対応方法をご紹介したいと思います。化学の力を借りつつも、最後にモノをいうのは体力です。
鏡のウロコ(水あか)を落とす方法
まず、ウロコの原因となる水あかは、水道水に含まれるカルシウム・マグネシウム・シリカ(二酸化ケイ素)・鉄分などの無機塩類化合物が付着したものです。
そして、この水アカを構成している要素が、それを除去する掃除のしにくさを助長しています。
- カルシウム・マグネシウムは、酸性溶液(代表的なのはクエン酸)で溶かして除去できます
- シリカ(二酸化ケイ素)は、水・酸では反応せず、アルカリ性溶液(重曹・セスキ単層ソードなど)で溶かして除去しやすくできます(※ 除去できます、ではありません)
同じ水道水から発生したものにも関わらず、除去には酸性・アルカリ性のどちらも必要で、一つの洗浄液では対応しきれません。これが鏡・コップ・グラス・加湿器のスケール(水あか)が難敵な理由です。
それでは、その水あかを退治する具体的な方法について説明していきます。
クエン酸を使った方法
鏡のウロコ取りでよくあるのが「クエン酸」を使った方法でしょう。クエン酸溶液を自分で作らなくても、お酢でも代用できる手軽さでよく紹介されています。
お酢に含まれるクエン酸の濃度は2.5%程度ですが、水に粉末のクエン酸を溶かしてクエン酸溶液を作るなら濃度を濃くしてください。濃度5%~(水100gに対してクエン酸5g以上)を目安にして、濃い酸性溶液を作るのがオススメです。
除去する方法は以下の手順で行います。
- 水でクエン酸を溶かしたクエン酸溶液(または、お酢)を用意します
- 霧吹きなどでクエン酸溶液を鏡に吹き付けます
- 鏡にサランラップを貼り付けてパックした状態にします
- 半日~1日放置してから硬めの歯ブラシやスポンジなどで水あかを落とします
一見して分かるとおり、非常に時間も手間もかかる面倒な方法です。化学反応としてクエン酸を使用することは正しいのですが、あえて積極的にクエン酸を利用する必要はないでしょう。
もちろん、スチーム式加湿器で発生するスケールを除去する際、クエン酸(と重曹・セスキ炭酸ソーダ)が役に立つのは間違いありません。これは他に選択肢がないから重宝している例ですね。
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ただ、鏡のウロコ取りに、ここまで時間と手間暇かける価値はないと考えます。また、クエン酸が効果を発揮するのはカルシウムで構成される水あかで、シリカ(二酸化ケイ素)のように酸性溶液では落としにくい化合物に対しては効果がありません(酸には反応しないため残ります)。
結局、シリカのような成分に対しては、最終的に力で擦り取るのが現実的な対応です。使っている水道水の成分にもよりますが、化学反応で全てポロポロ落ちるなんてことはありません。
ダイヤモンドパッドでこすり取る方法
次は、ダイヤモンドパッドで物理的にこすり落とす方法です。
ここまでは、水あかの性質を調べて、酸性・アルカリ性の中和による化学反応で掃除する方法でしたが、冒頭にも書いたとおり一周回って「一気にこすり落とすのが一番」というのが私の結論です。
ここで利用する「ダイヤモンドパッド」ですが、100円ショップ売られているダイヤ研磨パッドは全く使い物にならないのでオススメできません。100円ショップの商品でもダイヤモンドパッドらしき面がありますが、なぜか溶けだしたり、ウロコよりも弱い耐久性のものがあったりします。LOFTなどで販売されている「水アカ汚れ消しゴム(株式会社シード)」も同様で、細かい水あかまでは落とせず確実に残ります。安物買いの銭失いに注意してください。
ダイヤモンドパッドは乾燥させてカビが生えなように保管しておけば、かなり長く何度でも使えます。最初にケチって安物を買わないほうが、長い目で見てコストパフォーマンスがいい商品です(商品価格の目安は600円~1,500円です)。
使い方としては、鏡とパッドをシャワーをかけながらゴシゴシと削り取るだけです。男性の力であれば、相手がカルシウム・マグネシウムでもシリカであろうと、少々疲れるだけで問題なく擦り取ることができるはずです。
力のない女性や汚れがあまりにも頑固な場合、クエン酸や重曹(セスキ炭酸ソーダ)の溶液を吹きかけて30分-1時間ほど放置してから作業すると良いでしょう。
クエン酸で柔らかくなるのはカルシウム・マグネシウムで、それでも残るのはシリカ(二酸化ケイ素)です。シリカには同じアルカリ性の重曹またはセスキ炭酸ソーダの溶液を吹きかけてください。ただし、時間が経ったシリカはガラスや石のように固くなるので、セスキ炭酸ソーダでもポロポロと簡単に落ちるようなことは期待できません。繰り返し溶液を吹きかけてゴシゴシしてください。
水道水の中にシリカが多く含まれている地域
私も知らなかったのですが、残念なことに日本は水道水に含まれるシリカが多い国のようです。
さらに、日本の中でもシリカが多く含まれている地域があるので、その違いを実感している人もいるかも知れませんね。
日本の中でも特にシリカ濃度が高い地域があります。以下に示した地域はシリカ濃度が特に高い地域です。
- 東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の1都5県にわたる利根川流域
- 千葉県内房
- 静岡県沼津、三島、富士周辺
- 長野県の温泉地周辺
- 香川県から愛媛県今治市までの海沿い
- 北九州から鹿児島県の鹿児島本線沿い
- 長崎県島原周辺
私が住んでいる地域も見事に入っていたので、もともと加湿器や浴室の鏡にスケールが発生しやすい地域だったということのようです。
最後に、鏡を傷つけないように注意しましょう
基本的に、鏡とダイヤモンドパッドが乾燥した状態で擦らなければ、鏡にダイヤモンドパッドで目に見えるような傷はつくことはありません。ただし、削り取った水あか(スケール)がダイヤモンドパッドの表面についた状態で、そのまま無理にこすり続けると傷つく可能性があります。
何度も書いているシリカ(二酸化ケイ素)は、2000度まで熱するとガラス(石英ガラス, シリカガラス)になるような物質で、ボイラー設備などでは排水管をつまらせてプロでも除去に手こずるほど硬い物質です。
そのため、ダイヤモンドパッドで研磨する際は鏡とパッドにシャワーを当てて、削り取ったスケールを洗い流しながら作業するようにしましょう。削り取れたシリカは鉱石(石英の結晶)だと思ってください。石で鏡をこすらないようにしてください。
水あかで汚れた浴槽の鏡は磨くことで驚くほどキレイになり、水がついてもすぐに流れ落ちて、キレイな鏡本来の役割を果たしてくれます。ダイヤモンドパッドを使って、ぜひキレイな鏡を取り戻してください。