以前、国際スポーツ栄養学会(ISSN, International Society Of Sports Nutrition)などで発表された研究論文をもとに、目的別の正しいプロテインの飲み方を紹介しました。
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筋肥大やダイエットを目的に正しいトレーニングとプロテインを摂取するのは当然として、その結果として自分に筋肉はどれくらいつくのかを把握していますか?また、その限界はどれくらいなのでしょうか。
トレーニングに励む多くの人は、アスリートや芸能人など目標や理想としている体があるはずです。あまりにも骨格レベルでかけ離れた体は厳しいと思いますが、果たして現実的に自分自身は理想的な体にボディメイクできるのでしょうか。
今回は、多くの人が気になるであろう筋肉が成長するスピードや期待できる筋量の限界について、日本にも法人のあるNSCA(National Strength and Conditioning Association)や海外のトレーナーが発信している情報などをご紹介したいと思います。個人差はあるものの、ナチュラル(アナボリックホルモンなどのドーピング不使用)での筋肉量の限界には指標・目安があります。
※ この記事は男性向けです
筋肉の成長
まず最初に「筋肉の成長」についてですが、これには下記のような要素で個人差があります。
- トレーニング期間の長さ
- ホルモンの生成・分泌
- 遺伝
- マッスルメモリー
それでは、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
トレーニング期間の長さ
まずは単純に「どれくらいの期間トレーニングしているか(トレーニング歴)」です。
トレーニングを長く続けている人に比べて、筋トレを始めたばかりの人は早く多くの筋肉をつけることができます。
トレーニング年数 | 1年間でつく筋量 |
1年目 | 9.0 ~11.2 kg(1.0kg / 月) |
2年目 | 4.5 ~ 5.2 kg(0.4 kg / 月) |
3年目 | 2.2 ~ 2.7 kg(0.2 kg / 月) |
4年以上 | 0.9 ~ 1.3 kg(0.1kg / 月) |
上記はフィットネス・ライターでボディビルのコーチも務める Lyle McDonald(ライル・マクドナルド)が提唱するモデルで、トレーニング期間の長さによる筋肉の成長を数値にしたものです。
原文では単位が lb(ポンド)・ ft(フィート)・ inch(インチ)ですが、分かりやすいように kg(キログラム)・ m(メートル)・ cm(センチメートル)に換算しています。
・1 lb = 0.45 kg
・1 ft = 0.30 m
・1 inch = 2.54 cm
実際に長くトレーニングしている人ならトレーニング期間と成長スピードが反比例するという考え方は、具体的な数値は別にしても実体験として納得感があるでしょう。トレーニングを始めたころのフレッシュな体は、日に日に筋量・筋力が増量しているのを感じられましたよね。
ホルモンの生成・分泌
2番目はテストステロン(Testosterone)を始めとした筋肉の成長を促すホルモンが生成・分泌される量です。これらは筋肉の成長に大きな影響を与えます。
トレーニング内容が不十分でテストステロンが十分に分泌されていなかったり、体質的にテストステロンが十分に生成されない体質の人もいます。
後者の体質はステロイドで男性ホルモンを摂り込めばいいという話でもないので、解決するのは非常に難しい問題です。一方、トレーニング内容の不足に関しては、正しいレジスタンス運動(筋トレ)を行なうようにすれば解消できる問題でしょう。
遺伝
3つ目に、筋肉の成長には遺伝も関係していて、元から「筋肉が付きやすい人」と「筋肉が付きにくい人」がいます。「体質」と言い換えることもできるでしょう。
ちょうど「ベルカーブ」と呼ばれる「正規分布(ガウス分布)」のような割合で存在していて、多くの人は68.2%に属する「平均」ですが、上位・下位の15.8%に属する人たちは「筋肉が付きやすい・付きにくい」と分類されます。
これにはホルモンバランスや体格・骨格などの要素が関係しており、同じトレーニングをしていても人によって筋肉の成長の仕方が違ってくる理由でもあります。
テレビ番組でジャニーズの King & Princeメンバーの平野紫耀さんが「筋肉がつきやすく、歯磨きしているだけで鍛えられてしまう」と言っていましたが、遺伝的に恵まれている人は自分でも筋肉のつきやすさは実感できるのかも知れません(歯磨きの話は大げさだとしても)。
マッスルメモリー
例えば、ウェイトトレーニングを続けてきた体重81kgの人が有酸素運動のマラソンを始めて、身体から9kg分の筋肉が落ちたとしましょう。その落ちた9kg分の筋肉を再び戻そうと思ったとき、どれくらいの期間が必要になるでしょうか?
9kgの筋肉量というのは、先ほど載せたライル・マクドナルドモデルで見ると、トレーニング初心者が1年間で得られる最大限の筋量ですが、答えは「それほど長くかからずに戻る」です。
これは「マッスルメモリー(Muscle Memory)」と呼ばれ、体を一定の状態に保つホメオスタシス(恒常性)というメカニズムによるもので、トレーニングによって1~2ヶ月もあれば元の筋量に戻せる可能性があります。
過去のトレーニングなどでマッスルメモリーがある人は、新たに筋量を獲得するよりも早く筋肉をつける(戻す)ことができるということです。
筋肉のつくスピード
次は、筋トレを始めた人ほど気になるだろう「筋肉の成長スピード」です。
これは個人差というよりも、実際にトレーニングを行なっていた期間(既に作り上げてきた筋量)によります。
Lyle McDonald Model(ライル・マクドナルド・モデル)
このモデルは先ほども載せているライル・マクドナルド・モデルの再掲です。
トレーニング年数 | 1年間でつく筋量 |
1年目 | 9.0 ~11.2 kg(1kg / 月) |
2年目 | 4.5 ~ 5.2 kg(0.4 kg / 月) |
3年目 | 2.2 ~ 2.7 kg(0.2 kg / 月) |
4年以上 | 0.9 ~ 1.3 kg(0.1kg / 月) |
トレーニングを始めたばかりの人は、非常に早いスピードで筋肉をつけることができる一方で、トレーニングの年数を重ねるごとに成長が鈍化していきます。
もちろん、最初に書いたような種々の要素で上振れ・下振れはありますが、概ね上記の範囲に収まるでしょう。女性に対しては、モデルを作ったライルは上記の数字を半分にして見ることを推奨しています。
Alan Aragon Model(アラン・アラゴン・モデル)
もう一つのモデルは、運動生理学者のアラン・アラゴンが提唱しているモデルです。
カテゴリ | 増加する筋量の割合 |
初心者 | 体重の 1.0~1.5% / 月 |
中級者 | 体重の 0.5~1.0% / 月 |
上級者 | 体重の 0.25%~0.5% / 月 |
これもカイル・マクドナルドのモデルと同じで、トレーニングの練度によって成長する量が異なるというものです。
例えば、これまでトレーニングをしたことのない体重58.9kgの若者の場合、適切なトレーニングと食事を行うことで、毎月0.6~0.9kg(年間6.8~10.4kg)の筋肉を増やすことができるということになります。
1年後、体重は70.3kgまで増加し、そこからは毎月0.2~0.6kg(年間4~8kg)の筋肉を増やせるという計算です。
そして、さらに1年後には77.0kgまで増加し、ここからは「上級者」のカテゴリに分類され、毎月0.1kg~0.4kgしか増えない状況になります。ここまでくると、既に身体につけられる筋量の上限が近づいています。
これこそがジムで大きな体をしている人たちがトレーニングを何年も続けている理由で、さらなる筋肉を作るには長い時間や忍耐・覚悟が必要となってくるわけですね。トレーニングをしている人は脂肪を減らすことの単純さ(辛さは別です)を知っているので、一定以上の筋肉をつけることは脂肪を減らすことよりもはるかに難しいと感じるでしょう。
自然につけられる潜在的な筋量の限界
筋肉の成長や成長スピードは人によって異なることが分かったところで、次に成長の限界となる筋量の上限についても確認しておきましょう。
これは誰にでも当てはまるような考え方はありませんが、多少の誤差はあるものの概ね当てはまるような算式が存在します。
ここでは簡単な2つの算式をご紹介していますが、前提条件(体脂肪率など)もあるので、自分が目指している身体にあてはめて確認してください(体脂肪率6%のような極端に絞られた身体を目指していないことが前提です)。
1. BuiltLean.comの算式(Lean Body Mass, LBM)
このLBMの算式は身長を使うため、脂肪を除き、筋肉以外にも骨・血液など体にある全てが含まれます(除脂肪体重)。
算式は以下のとおりです。
(( 身長cm ÷ 2.54 - 70 )× 5 + 160) ÷0.54
これで算出される数値(kg)が「自然につけられる筋量の上限」という1つの考え方です。
算式を例で説明すると、身長 177.8cm以上であれば +2.5cmごとに期待できる筋量が 2.25kgずつ増え、身長 177.8cm未満だと -2.5cmごとに筋量の限界が 2.25kgずつ減る計算になります。
上記の計算で出た数字は、あくまでも「(骨・血液などを含む)筋量の上限」なので、ここに脂肪・体脂肪率を加味することで体重が出ます。
別の例では、身長 180cmの人は筋量上限 76kg(骨・血液などを含む)という計算結果になります。もし体脂肪10%まで絞るとしたら脂肪は 8.4kgとなるため、体重 84.4kg(76.0kg+8.4kg)が180cmで筋量を上限までつけられたときの体重ということになります。
体脂肪率は以下の式で計算してください。
脂肪 ÷ (筋量+脂肪) = 体脂肪率
2. LeanGains.comの算式
次の公式はLeanGains.comでボディビルダーの指導を指導しているMartin Berkahn(マーティン・バークハン)による計算方法で、先ほどの算式に比べて非常にシンプルです。
身長cm - 100
算式自体は非常に単純ですが、これで出る数値は「限界まで筋肉がついた状態で体脂肪率5-6%のときの体重(kg)」です。
そのため、ここまで身体を絞り込む人を除いては、身体を相当絞り込んだときの参考値という位置づけでしょう。
3. Frame Size Model の算式
最後に参考までに、Casey Buttというナチュラルの(ステロイドを使用していない)ボディビルダーが提唱している算式もご紹介しておきます。
この算式は身長に加えて手首回り・足首周りのサイズ(全て単位はインチ)と「目標とする体脂肪率(%)」を使います。考え方としては「体格のいい(骨太な)人は同じ身長でも華奢な(骨細な)人よりも多くの筋肉をつけることができる」というものです。
考え方としては非常に理にかなっていて、外肺葉・内肺葉といった「筋肉の付きやすさ」という話とも整合性があると思われます。感覚的に納得感のある人も多いのではないでしょうか。
算式としては下記ですが、かなり複雑な計算式かつ日本では使わないインチ(1inch=25.4mm)が使用単位です。
ただ、これは不慣れな単位かつ算式も複雑すぎます。もし計算してみたい場合、事前に「身長・手首回り・足首周りをインチ換算した数値」を用意して、下記サイトで必要な数値を入力して計算してください。
maximum muscular potential calculator - dioxyme
入力欄にある"Bodyfat"は自分が目標とする体脂肪率です。体を絞らないときの筋肉量の限界を知りたい場合は、今の体脂肪率を入力してください。
身長別の筋量上限(目安)
最後に、身長別の「算式1. BuiltLean.com(Lean Body Mass, LBM)」と「算式2. LeanGains.com」で出される筋量の上限を表にしておきます。
※ 算式1は「脂肪を除いた体重(除脂肪体重)」で、算式2は「体脂肪率 5-6%のときの体重」です。
身長 | 算式1 | 算式2 |
165cm | 61kg | 64kg |
170cm | 65kg | 69kg |
175cm | 70kg | 75kg |
180cm | 75kg | 80kg |
185cm | 80kg | 85kg |
ここでは「Frame Size Model」で算出される数値は除いていますが、「Frame Size Model」で計算すると上記2つの算式とは3-6kgほどの違いが出ます。
上記の各種モデルを参考にしつつ、身体はトレーニングだけで作られるものではないので、適切な栄養管理も心がけるようにしてください。
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特に、記事中にあるとおり、これまでトレーニングしていなかった人は大幅な成長が見込めます。一生に一度のタイミングを生かして、ぜひ妥協しないプロテインを選んでください。早く成果を出すためにもオススメです。
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また、筋肉の成長が早いということは、その成長に合った負荷(重量)に変えていく必要があるということでもあります。買い足し買い足しでお金を使い過ぎないように、アジャスタブル・ダンベルのような負荷を変えられるトレーニングギアを使うことも効率的なトレーニングを行うポイントです。
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